パネルディスカッション① 【守】 景観・自然保護

持続可能な"魅せる"まちづくり

  • パネリスト
    • 小倉 善明 氏(studio-O主宰、日本建築家協会元会長)
    • 中島 恵理 氏(長野県副知事)
    • Dave Enright 氏(株式会社 Evergreen Outdoor Center 代表取締役社長 / チーフガイド)
  • モデレーター
    • 太幡 英亮 氏(名古屋大学工学研究科准教授・環境学研究科建築学系)

(総合司会:松沢斉)
第1部は【守】と題しまして、景観・自然保護のパネルディスカッションを始めたいと思います。
モデレーター(進行役)は、名古屋大学工学科准教授の太幡英亮氏です。
太幡氏は白馬北小学校、白馬中学校、大町高等学校を卒業されている完全な白馬生まれ白馬育ちの方です。東京大学大学院建築学専攻修了後、東京の渡辺誠アーキテクツオフィス、東北文化学園大学の助教授を経て、現在名古屋大学工学科工学研究科で准教授として教壇に立たれております。それでは太幡さん、進行をよろしくお願いします。

(太幡英亮氏、以下「太幡」)
こんにちは。太幡といいます。白馬生まれ白馬育ちで、今紹介してくれたのは実の弟ですけれども、今日はお久しぶりの方も多いと思いますが、よろしくお願いします。それでは私の方から第1部のパネリストをご紹介させていただきます。

まず最初に建築家の小倉善明氏です。東京大学建築学科卒業、ハーバード大学大学院建築学科修了、日建設計元顧問であり、日本建築学協会会長でもありました。現在はstudio-Oを主宰されています。よろしくお願いします。

引き続きまして、長野県副知事の中島恵理さんです。京都大学法学部卒業後、環境庁入庁、ケンブリッジ大学土地経済学科、オックスフォード大学環境変化管理学科修了、経済産業省エネルギー庁にて再生可能エネルギー政策を推進され、平成23年より長野県環境温暖化対策課長として自然エネルギー信州ネットの立ち上げに関わられました。

続きまして、株式会社Evergreen Outdoor Centerの代表取締役社長でチーフガイドのデイブ・エンライトさんです。カナダのバンクーバー出身で、キャピラノカレッジアウトドアレクリエーションマネジメント卒業、幼少よりアウトドアエコロジーが身近にある環境で育ち、カナダ雪崩協会レベル3、カナダスキーガイド協会認定ガイド他、多数の資格を有し、ウィスラーにてスキーガイド、アウトドアガイドを経て、日本のアウトドアフィールドと交互に活動、活躍されております。

それでは、まず、お一人5分の短い時間ですけれども話題提供をいただきたいと思います。

(太幡)
はじめに小倉善明さん、初めにご紹介したとおり建築家でございますけれども、新宿のNSビル、聖路加病院、JR東日本ビル等の数多くの大きなプロジェクトを手掛けられ、デザインには日本固有の美意識を尊重したい、それからランドスケープに特に関心を抱いていらっしゃいます。若い頃から足しげく白馬に通われている白馬愛好者の一人です。それでは小倉さん、よろしくお願いします。

(小倉善明氏、以下「小倉」)
ご紹介に預かりました小倉でございます。宮坂さんが見事なお話をされたので喋りにくいんですけれども、私は50年前に、皆さん生まれる前かもしれませんが、新田の庄屋丸八さんにお世話になって、40年前に庄屋さんのお母さんから土地を譲っていただいて、新田部落と田んぼの境の45度の傾斜地に45度の屋根をつけて、目立たない小屋を作って40年間白馬を楽しんでいます。
今日は私はですね、白馬の魅力と言いますか財産、先ほどから何回も話が出てますけれども、山と水が白馬の魅力、財産であろうと思いますけれども、その財産を活かそうということを建築家の視点から少し、5分ですけれどもお話したいと思っています。

この白馬の魅力、財産を活かすには私の立場としては「目立つ・目立たない」という軸から話してみたいと思います。今白馬を見ますと街並みが見えて、山が見えるわけですけれども、目を瞑って建物を消してしまうと、何が見えるだろうか。素晴らしい白馬の景観と、その麓に広がる扇状地なんですね。扇状地ですから当然緩やかな傾斜があって、よく東京でも言いますけれども、建物を外して見ますと地形が出てくるわけです。平川とか松川とか山から流れ出る川、それから川か分かれる水のネットワークがあるわけですけれども、これをどうやって活かすか。ともかく山と水というのは変わらないものです、目立たないものですね。そこに相応しい村づくりをするには、逆説的かもしれませんが、いかに目立たない村を作るか、ということが大切だと思います。

西洋の建築と日本の建築とはやはり宗教上にも変わっています。教会の建物は裸が原則ですね、教会が聳える。ところが日本の神社仏閣は森に囲まれています。ですから、自然と共存するのが日本の建築で、自然に対峙する、極端な言い方をしますと相対するのがヨーロッパの建築、そういう目から見ると、ヨーロッパのスキー場は建築物と自然が相対峙して、その美しさを以って、西洋の観光地というのはできているわけです。

ところがそれを日本でやろうとすると、元々その自然と対峙する建築を造るというのは、下手なんですね。日本人のDNA的に言えば、自然の懐に抱き込まれた建物をずっと作り続けてきたわけですから、日本人の得意な建築は「自然と共に存在する建築を造る」。これはですね、やはり白馬村にとっても大切にすべきだと私は思います。じゃあどうやったら目立たないようになるのかというと、「普通の建物を造る」、これは建築家として自戒の念を込めて言うんですけれども、とかく目立ちやすい建築を造る、隣が白い建物だったら私は黒で行くとかですね、日本には世界的に素晴らしい建築家がいて、一つずつの建築物は素晴らしいけれども、街の姿はなんと乱雑なことか…。

白馬村というのは、神様-白馬連峰というものがありますから、神に敬意を払った形の建物にしたらどうかと思っています。ということは、「屋根を付ける」ということですね。屋根を付けると言っても、赤だの緑だの茶色だのというわけではなくて、一色に整える、勾配も整える、それから壁の色も山に逆らわないものにする、それからもちろん山が見えるように高さを揃える。屋根と壁と高さ、この3つを揃えて、100年続けたらそれは世界で一番素晴らしい村になっているのではないかと思います。

それから山と水と言いましたが、時間が無いので省略しますが、山を男の神様とすると、水は女の神様であります。したがって、我々の生活の中に深く解け込んでいるきております。例えば、新田部落に昔から通っておりましたが、新田部落の道路の勾配とパリのシャンゼリゼの通りの勾配は同じなんです。なんでそういうことになったかというと、物を流すということからそういう土地が選ばれた。新田部落は村を作るときに材木を運んだり、物を洗ったりして水を使いましたけれども、シャンゼリゼも実は水道管が通っていまして、朝早くシャンゼリゼに行きますと水道管から水が流れていて、前の日に汚した道路をきれいに洗っています。そういうように、水の力というのは白馬村のあらゆるところにあるんです。残念ながら水の力の恩恵を被ろうとするあまりに効率を高めるためにコンクリートを使って水路を固めました。私が40年前にいたときには、無数のホタルが乱舞していましたけれども、今や一匹もいなくなりました。女神は非常に怒っているわけで、こないだも地震で姫川の上流がだいぶ崩れて今直していますけれども、本当にあれでいいのかどうか。私はそれに対して一つの提案は、コンクリートで固めたからにはその罪を償うために小水力発電をそこでしたらどうか、と。木流川とか新田の川とか、あそこを小水力発電の基にして、水路の中に電線を引くわけです。そうすると国道に当たりますね、国道では電線の地中化をしようとしてますから、そこに結び付ければ白馬水力発電の街になるのではないかと思っています。いろいろそういう宝が白馬にありますので、ぜひ活かしたいと思っております。

(太幡)
ありがとうございました。最後にまとめてディスカッションの時間を取りたいと思っていますので、次に移りたいと思います。

(太幡)
それでは副知事の中島さんですけれども、中島さんは二地域居住者・移住者ということで、信州に来てそういった経験を活かす、それから一人多役というライフスタイルもご実践されていることと、地消地産という暮らしも実践されながら政策にも活かしているということで、その辺りのお話をお聞かせいただけるということで、お願いいたします。

(中島恵理氏、以下「中島」)
みなさん、こんにちは。長野県知事の中島でございます。白馬に来たのは、大学時代京都にいたんですけれども、スキーで来たんですが、スキーをしながら雄大な山の景色を見て「日本にこんなに素晴らしい景色があったのか。いつか長野に住みたいなぁ」と思ったきっかけが白馬でございまして、今も長野県内各地を回っていますけれども、白馬は本当に美しい場だなぁと思っています。今日は長野県で昨年策定しました「地方創生戦略」と私のライフスタイルを少し紹介しながら、百年後の白馬について少しご提案したいと思います。

長野県では地方創生戦略を作りました。6つの今後の信州創生の基本方針を掲げていますが、3つのキーワードをご紹介したいと思います。まず、人生を楽しむことができる多様な働き方・暮らし方ということで、「一人多役」、「半農半x」という言葉もありますが、一人の人が複数の役割を担っていく、こういったライフスタイルが今後は必要なんじゃないか。それから、活力と循環の信州経済の創出とありますが、地産地消、地域にある資源を地域の中で活用し、地域の経済を活性化していく地産地消に加えて、地域の中で消費するものを地域の中で生産するものに変えていく、”地消地産”という考え方も重要なのではないか。それから、今後の人材育成ということで、長野県の素晴らしい自然を活かした人材育成として、「信州やまほいく」、こういったものも今後の白馬のまちづくりでも有効なんではないかと思っております。

まず「一人多役」でございますが、長野県ではこの自然資源を活かして、皆さんが人生を楽しむことができるような豊かなライフスタイルを進めていきたいと思っております。ライフスタイルの一つの形として、「一人多役」というキーワードを出しています。”百姓”という言葉もありますけれども、元々長野県、白馬の方たちも多くの方が一人多役だとおもいます。今でも宿泊業をされながら農業をされたりだとか、本当に一人多役の取り組みがあると思いますが、私自身は東京で長く仕事をしていまして、長野に来るまでは本当に仕事だけの生活でした。その中に、自分が環境政策の仕事をしながらも環境に優しい生活をしていない、そういった矛盾を感じて、何かライフスタイルを変えたい、こういった想いで長野に引っ越してきて、そして複数の役割を担うような暮らしを始めています。農業をしたりとか、地域の文化を継承したりとか、里山整備をしたり、こうした地域の自然を活かして豊かにするような、そういった多様な働き方を今後も進めていきたいと思っています。

それからもう一つが地域の経済循環でございます。もちろん長野県内で生産したものを長野県外に売っていくことは重要でございます。ただ、今後の人口減少社会の中では、地域の中で地域にある資源を活かして、この白馬にも美味しい水もありますし、豊かな自然環境もあります。そういったものを活かして、それを守り育てながら地域の中で経済循環をしていく。今日もお昼非常に美味しい白馬で生産されたものを使って、白馬の美味しい食材を活かしたレストランで食事をいただきました。こういった地産地消または地消地産ということで白馬の宝を白馬の中で回していく、そういった地域づくりが重要かなと思っています。そういった地域の経済循環の関係では、これまで地産地消という言葉が使われて長野県でも農産品やエネルギーといった地産地消を進めてきました。どちらかというと生産者側に視点があって、地域で生産されたものを地域の中で活用していくということですけれども、そういった地産地消に加えて、地消地産ということで、例えば白馬の中のペンションや旅館で、白馬で生産できないお肉やお魚を使うのではなくて、白馬ならではの美味しい山菜や白馬で生産できたものに置き換えていく。こういった地消地産をすることによって、環境にも優しく、地域の経済も潤って、そして白馬に来た方にも喜んでもらえるような、そういった地域の経済循環を進めていけないかと考えております。

ここからは私自身のライフスタイルの紹介ですけれども、私も東京で仕事をする中で矛盾を感じて、今から15年前に長野県に移住をしてきました。八ヶ岳山麓での暮らしです。ここでは、先ほどの一人多役、地産地消、そういったものを自分自身のライフスタイルの中でも活かしたいということで取り組んできました。まずは食の自給ということで、夫が有機農業をしていましたので、食べるもの、調味料を含めて10年くらいかけて食の自給をしています。また、住まいの自給ということで、10年くらいかけて、まだ完成していませんが、地元の木を切るところから始めて、地元の材料をなるべく使いながらセルフビルドで家を作りました。この地域ではアカマツがたくさんあるんですけれども、アカマツは建材としてあまり向かないということで、「今は使われてないんだけれども、過去はたくさん使われていた」、そんな話を聞きまして、このアカマツを使った家で土壁の昔ながらの家を作りました。先ほど小倉先生もおっしゃったような、地域の素材を活かした目立たない家になったかな、と思っています。地域の未利用資源ということでは、柿がいっぱいあるんですね。でもほとんど使われずに猿を人里に引き込んでくるような状況になっているんですが、我が家では子どもと一緒に柿を取ってきて、今の時期ですがこうやって干し柿をつくっています。これも秋の美しい景観の一つかなと勝手に思っていますが、地域の未利用資源を活かして、私たちにとっては非常においしい食を提供し、地域にとっては目立たないけれども地域の自然環境に適した景観を作れているかな、と思っています。

こんな形で、夫婦合わせてなんですけれども、私は東京では仕事しかできない生活をしていましたが、長野に来てからは農業をしながらセルフビルドをし、そして家は薪ストーブですので、里山の手入れをしながらまちづくりをし、そして地域の豊かな森づくりにも貢献できているかな、と思っています。また、昨年から夫はハンターの資格を取って、山を荒らしている鹿を獲って美味しい鹿肉を食べる、こんな生活もしていきたいなと思っていますが、自然に負荷をかけずに美しい自然景観を守ることができる、そして自分自身も豊かなライフスタイルが送れる、こういったライフスタイルを長野県でも広げていくべく、様々な一人多役の取り組みをされている方の調査をしたり、発信をしたり、政策を考えていきたいと思っています。

最後に1点だけなんですが、こういった美しい自然環境を守っていくためには、人づくりが重要かなと思っています。私自身もずっと東京または京都という街中にいたので、自分自身で五感で自然を理解できる人間ではないと思っています。そういった意味では幼少期から自然の中で過ごして自然を理解し、そして自然を守る人間を増やしていく必要があるかなと思います。長野県では「信州やまほいく」ということで、幼児期に焦点を当てて、自然の中での保育を推進しています。ただいまのところ、1日中森の中で保育を行う「森の幼稚園」型の取り組みや、または通常の保育園なんだけれども週5時間程度自然の中で保育を行う、そういった保育園・幼稚園を「信州やまほいく」として認定して支援をしていくという取組みを始めています。実は私の子ども2人とも信州やまほいくで育ちまして、非常にたくましく、自然を理解できる人間になってきたかなと思っています。この白馬でもやまほいくが増えて、この素晴らしい自然を守る人づくりをぜひ一緒に進めていきたいと思っています。

最後に、白馬村はいろいろな開発規制の条例等で皆さんの力で自然を守ってこられたと伺いました。これからはそういったものに加えて、私たちの暮らしや、または農業・林業、そういった生活の営み・経済を通じて美しい自然環境を守れるような、そういった白馬を長野県も一緒に創っていければと思っております。以上でございます、ありがとうございます。

(太幡)
ありがとうございます。副知事自らこういう暮らしを実践されているというのが非常に驚きなんですけれども、また後でお聞かせください。

(太幡)
それでは引き続きまして、デイブ・エンライトさんですけれども、エンライトさんは白馬に来て、オフピステを中心とした自然そのものの楽しさというものを伝える先駆者でありながら、安全面も含めて指導されていますけれども、大学時代からリサイクルやエコロジーなどの環境的な取組みもしてこられたということで、今日はそういった面からのお話もお聴きしたいと思いますので、よろしくお願いします。

(Dave Enright氏、以下「エンライト」)
カナダのバンクーバー出身、デイビット・エンライトです。どうもこんにちは。今日お話したいのは環境のことなんですけれども、私はこの白馬の環境を本当に素晴らしいと思っていますが、それを今、アウトドア・ツーリズムのことをいろいろやっているんですけれども、この素晴らしい白馬の自然が無ければ、我々の半分くらい、全員かもしれないんですけれども、仕事ができないと思っています。今日のポイントを話すと、私はエネルギーの供給のことを考えたい、できれば二酸化炭素Co2のエミッションを減らしたいと思っています。それを実現するためには、リサイクル、ゴミを減らすことが必要と考えます。また、私の大好きなアウトドアスポーツ、マウンテンバイク・自転車に乗ることも環境に優しいことだと思いますので、サイクリングロードのお話もしたいと思います。

白馬の山の素晴らしさは皆さんご存知のとおりですが、山を歩くと自然がとても素晴らしい。標高の高い山々、深く積もる雪、きれいな湿原や湖、広い森、新鮮な空気が、私たちの大事なものだと思います。森の中で健康な暮らしができるアドバンテージがあります。お金ではなくて、周りの環境・景観が大切だと思います。そして自然の中の教育も大事だと思います。我々の子どもたちが、たまに忘れるんですけど、毎日大自然の中に暮らしています。外からの子どもたちにも、私たち白馬の村民から自然の素晴らしさを見せることがチャンスだと思います。

ピュアな水、ピュアな土地、ピュアな空気、ピュアなスピリッツをこのエリアは持っていて、私たちはそういったものを大事にしなければならないと思います。それらを大事に思うと、今でも私たちが大事だと思っている雪も、残すことを考えなければならない。100年後も雪が同様に降るのか。去年は雪が少なかったですが、それは温暖化など気象に変化が起きているからだと思います。100年後はどうなっているのか、私たちの今の取組みがそれを決めると思います。

やっぱり白馬はとてもきれいな水がありますが、皆が見えないところ、山の中に素晴らしいものがあったりします。その美しさを残しながら、水の力を使うことも進めるべきだと思います。既に日本中で水力発電が行われていて、電気を作っています。これは白馬にとって大きなチャンスだと思います。先ほど小倉さんがお話したとおりですけれども、私たちの家、仕事場、全部そういった電気で回すことができるんです。こういうもの(画像)ができるんですけれども、私がカナダから白馬に来て20年超えますけれども、びっくりしたのは砂防ダム、コンクリートがいろいろとありまして、どんなに雨が降る、どんなに雪が降る、どんなに水が溢れるか解って、砂防ダムの必要性は少しずつわかりました。でもその中でまだ上手く水の力が使えるのではないかと思います。他の発電方法に比べて、砂防ダムの横に水力発電を簡単に安く設置することができます。それと、残っている魚のことも考えて、きれいな村の中で、HAKUBA VALLEYの中で動物が同時に暮らせることも考えながら、私たちの100年のエネルギーを考えたいと思っています。

カナダの私の地元では、マイクロ水力発電のガイドラインが出ています。こういうことを、自分で水力発電ができるように出しているんですね。ガイドラインで「やっていいこと」と「やっていけないこと」が定められています。これから電気自動車が出てきますが、値段的に皆がすぐ乗ることはできないんですけれども、そのうちこういった車ばかりになるのではないかと思います。このまま大きな電力会社に任せていると、私たちのきれいな川が大きなダムになってしまうかもしれない。そして原発への依存が高まるではないかと思っていますが、そうならないためにも小水力発電が必要だと思っています。

きれいな自転車道があれば、自転車でなくても、歩いたり、馬車で移動することもできる。通勤・通学のために、健康のため、犬の散歩に、きれいな川の横に歩いたり自転車で走ったりすることができます。これも観光につながるのではないかと思っています。

白馬中にこういうレンタル自転車、自由に使って返すことができると思いますので、最近ヨーロッパの方ではバイクシェアが増えています。白馬で進めても良いのではないかと思います。 小路だけでなく、全ての道にバイクレーンが必要だと思います。そうすると安全・安心で自動車と一緒に自転車が走れるのではないかと思います。

最後に、Welcome to a cleaner, healthier, more beautiful you… Welcome to Hakuba.
以上です。ありがとうございました。

(太幡)
ありがとうございました。持ち時間がかなり消費されてしまったというところがありますが、5分か10分くらいお時間をいただいて、簡単なディスカッションをさせていただければと思っています。

このパネルディスカッションのテーマが【守】ということで、景観・自然保護ということになっています。このテーマを与えられた時に、ひとつ私の方から前提としてお伝えしておきたいことがありまして、まず紹介しますけれども、白馬村というのが1974年に開発基本条例というものをつくって、先ほどの村民憲章よりもさらに前ですけれども、非常に早い段階で開発に対して一つの条例で守っていくというような動きは、日本に先駆けて取り組んでいるという前提があります。その後のバブル開発とか、オリンピックの投機の規制というようなものも含めて、時代時代の開発の波から、今回のテーマの「守る」ということは、条例をさらに改正しながら、わりとできてきたのかなというところで、その辺りもエンライトさんもおっしゃっていましたけれども、白馬の良さにつながっているところがあるのかなと思います。なので、今回のテーマの「守る」は、実は白馬は得意とするところで、これまでの人たちもしっかり守ってきているということが言えるんですけど、一方で、逆に建築景観みたいなところで言うと、陳腐化して老朽化してそのまま取り残されているという側面もあるし、さらに今の時代の変化というものを受けて、新しい時代の一歩が踏み出せているかというとそうでもなくて、とりあえず守っているというところから踏み出せていないのかなと私としては感じています。

そこで、お一人ずつにお聞きしたいんですけれども、守るということに長けている白馬において、次の時代の一歩を踏み出す時に、どうすべきなのかということで、どんな側面からでも良いので教えていただきたいと思います。まず小倉先生からよろしくお願いします。

(小倉)
12年程前に国は景観法という法律を作ったわけです。非常に画期的なのは、景観は国の財産であるということから、景観法は成り立っています。白馬村の条例もあるんですけれども、大きな国の法律で縛られた仕組みを白馬村に持ってきて進めるのが良いと思うし、景観法では景観協議会、要するに行政と事業者と住民が一体となった協議会を作って、景観に対するいろいろな仕組みづくりをしていく、こういうルールを利用してですね、せっかくできたわけですから、すごく優しい形でルール作りをして、住民が解り易い、住民も一緒になってルールを作って白馬の景観を、特に街の景観を作っていくということが、いずれにせよ複雑なものではなくて、単純な形で皆がわかりやすい言葉で作っていくことが必要ではないかと思います。

(太幡)
ありがとうございます。私も感じているのは、大規模な開発が入ってこなかったが故に、小規模のものがたくさん残っているというか、小規模のものを更新しながら次の白馬の景観を作っていくのかな、と。

(小倉)
やはり住宅が景観の一番のベースじゃないかと。住宅づくりが大切だと思います。

(太幡)
非常にサステナブルなモデルを構築しやすいのも今の白馬の良さなのかなと思いました。それでは中島さんからもお願いします。

(中島)
私からは小倉先生やエンライトさんの方から水力発電の話がありましたので、守るから創っていくという視点で、この白馬地域も自然エネルギーの利用の可能性はすごくあるのではないかなぁと思っています。今、長野県では住民の皆さんが、自然エネルギーの専門家でない皆さんが、自分たちで地域の資源を活かして地域を豊かにするための自然エネルギーの事業化の支援をしています。今年度からは素人の方が事業化できるような人材育成のプログラムを始めたりとか、また水力発電につきましては様々な手続きがあって結構大変なものですから、水力発電の適地選定からどういう風に事業化していくかということを懇切丁寧に支援をする小水力発電キャラバン隊というものを設けました。砂防施設の話がありましたけれども、県の砂防課とも調整をしていまして、砂防課でも砂防ダムを使った水力発電を推進するように立場も変わってきておりまして、地域の資源を活かしながら地域の環境を守っていくために、そしてエネルギーの観点からも環境に優しい地域を創っていくためにも、県もしっかり応援していきたいなと思っています。

ただ一方で最近は太陽光発電が乱立して、先ほど小倉先生がおっしゃった景観の問題なんですけれども、再生可能エネルギーと景観問題がなかなか両立しにくい問題が出てきていまして、今年長野県でも景観条例の対象に太陽光発電を加えて地域の景観を維持する形での自然エネルギーの推進も始めています。ただやはり景観条例も規制力が強いものではありませんので、その地域の景観にマッチしたきめ細やかなものになっていくためには、先ほど小倉さんがおっしゃったような地域の皆さんの協議会のようなものができて、地域の皆さんでこの地域の景観を守っていくための機運を創っていくことが重要かなと思っています。

(太幡)
ありがとうございます。中島さんが副知事でいる間にたぶん今の白馬の若手がぜひ、私も含めてですけれども、県の助成をいただきながら取り組めるとことから取り組み始めるということができればいいのかな、と思いました。 最後にエンライトさん、お願いします。

(エンライト)
私も白馬に初めて来たときに感じたのは、スキー場が一つの大きなリゾートではなくて、それぞれのコミュニティが営業している場所だと思って、周りのお店もそうだったんですけれども、それは難しい面もあるし、でも自分の心と考えを全部入れられるような体制だと思いますので、これからもコミュニティも同時に動かないと何にもならないと思いますし、他のものを変えるために待つというよりも、今私たちがコミュニティとして動くことが大切だと思います。

(太幡)
海外からいらしたガイドをされているエンライトさんに「白馬はコミュニティが魅力なんだ」とおっしゃっていただけるのは、私たちとしても非常に嬉しいし、ぜひ一緒にコミュニティづくりをしていければいいんじゃないかと感じました。 実はディスカッションの時間がもう過ぎているんですが、最後に先ほどの宮坂さんのお話と絡めて、まとめと言いますか、先ほどの話で「村には非常に立派な理念があるじゃないか、それに向けて行けばいいんだよ」と言葉がありましたが、使命という言葉がいいなぁと思いまして、理念と使命は少し違って、使命という言葉は、人のために何かしようとか、社会のために何かしようという立場なので、それはもう一度白馬のミッション、使命は何なのか、世界の人たちのために白馬は何ができるのかということを、開かれた議論を通じながら、考えていけるといいのかな、と感じました。

まとめになっていないかもしれませんが、時間が過ぎておりますので、以上にさせていただきたいと思います。パネリストの方々に拍手をお願いいたします。