基調講演 - UPDATE白馬

ヤフー株式会社 代表取締役 宮坂 学 氏

みなさん、こんにちは。ヤフーの宮坂です。

百年後の白馬村に何を残すのかというテーマで最初に30分程基調講演としてお話をさせていただきます。

本日の私のスタンスですが、ヤフーの社長という立場から「どういう風に物事を普段考えているか」ということ、そして一方で白馬のことが大好きな一住民としての視点から思うところを皆さんにお伝えしたいと思います。

ヤフーはインターネットの会社ですし、白馬村とは似ているところが無さそうに見えますが、地方や海外で働いているグループ会社の社員も足すと10,000人くらい働いています。白馬村の人口が9,000人くらいですので、そういう意味では規模感は似ているのかなと思っています。

10,000人の中で社長として5年目を迎えているわけですが、いつも迷った時に立ち返って考えるのは何かというと、「企業はなぜ存在するのか」ということです。難しい意思決定をするときはいつもこの原点に立ち返るようにしています。

皆さんは考えたことありますか?なんで会社って必要なの?と。正直10,000人が一つの組織にいると無茶苦茶大変です。大変なことの98%は人間関係で、毎日のようにトラブルが起きます。無理もないですよね、10,000人の縁もゆかりも無い人が同じようなところでぎゅうぎゅう詰めになって働くわけです。ストレスが溜まらない方がおかしい。でもなぜそういう環境で仕事をしているのかというと、それでもやりたいことがあるからです。だからみんな一生懸命頑張れているのだと思っています。

企業の目的は何かというと、一つは事業。ヤフーだと検索サービスだったりニュースだったり、いろいろな事業をしています。もちろんお金を稼ぐのも大切な事です。ただ、これが本当に我々の目的なのかというと、ちょっと違うかなという感じがあります。日頃すごく大事にしていることではありますけれども、事業もお金も究極の目的ではありません。

会社として一番大事にしている目的は何か。なぜ我々はこの世に存在しているのか。理念とか志とかミッションとか使命とか、いろいろな呼ばれ方をされますが、そういった言葉に代表されるような、何か成し遂げたい姿があるということが大事であると心の底から信じています。

理念、ビジョン、ミッションを実現する具体的な方法が何かというと、それが事業になります。事業がやりたいから会社をやっているわけではなくて、実現したい理念があるから事業をやっている。事業があるからお金を稼げると、そういう順番で整理をしています。

具体的な例をお話します。ヤフーの筆頭株主はソフトバンクグループですが、同社は「情報革命で人々を幸せに」が企業理念です。事業をやる理由は、携帯電話で日本一の会社になりたいとか、ソフトバンクホークスで今年も優勝したいとかではありません。デジタル情報革命で、インターネットやスマートフォンを持った人に「幸せになった」と言ってもらえることをやろうというのが目的であって、それを実現するために携帯電話を売ってみたり、ロボットを作ってみたり、AIの会社を買収してみたり、プロ野球の球団を持ってみたり、そういった事業をやっています。

ソフトバンクグループでも、幹部が集まって100年後、300年後にどういう企業になりたいかという話し合いをすることがあります。でも、正直言って、100年後の事業の話は誰もわかりません。

100年前に電気を実用化した人たちは、100年後の人がまさかこんなに電気使っているとは思わなかったと思います。100年後の事業を想像することはほとんど不可能だと思います。しかし、何の事業をやっているかわからないけれど、「情報革命で人々を幸せに」という目的だけは変わることがないというのが、いつもみんなで一致する議論なんですよね。

一方ヤフーは、情報技術で人と社会の課題を解決していく「課題解決エンジン」をミッションとして掲げてますが、それを実現するために「ヤフオク!」や「Yahoo!ショッピング」、「Yahoo!ニュース」など様々なサービスを提供しています。でも、100年後にヤフーが存続しているとしたら、今提供しているこうしたサービスはほとんど続けていないのではないかと思います。それでも真ん中にある「情報技術で人と社会の課題を解決しよう」という企業理念そのものは100年後もほとんど変わらないと思っています。

売上げも利益も時価総額も全て大事なことですが、一番ではありません。一番大事なことは、やはり企業理念。ミッションとか志と言われているようなものです。

そういった理念を実現するためにあらゆる組織は存在するということになりますが、理念の実現は個人でやるよりも組織でやる方が圧倒的に有利です。なぜかというと、理念というのは難しいものにチャレンジするわけですね。簡単にできないことを理念に定めて何とか実現しようと頑張るわけですが、やっぱり人間の人生は短いですから、一代限りではできないことも多いです。ただし、人生70年に対して、組織は100年でも200年でも生き残ることができますから、組織を作れば個人の寿命を超えて理念を実現することができる。そして個人だと使えるお金も伝えられることができる範囲も限られていますが、組織を使えばもっと多くの人に届けることができます。だから、大勢の人が集まって「ああでもない、こうでもない」と七転八倒しながら自分たちの信じるビジョン・ミッションを世の中に問いかけていく。これが経営ではないかと私は思っています。

ちなみに世界で一番長生きしている会社というのは、金剛組という大阪の会社です。創立が578年、今からもう1,400年以上前ですね。社寺建築をやっている会社なんですが、一番最初の施主さんが聖徳太子。事業実績のところに施工実績:四天王寺って書いてあるんですが、なかなかすごい会社です。これもやっぱり組織を作っているから、1,400年生き残っているんですね。個人だったら一代限りで終わってしまいますので、組織の素晴らしい点ではないかと思います。

最近だとアメリカの大統領選挙があって、ちょうどトランプさんが勝った日にニューヨークに仕事で行っていました。トランプさんが勝ってどうなるんだとか、ヒラリーさんが勝ったらどうだったんだとか、いろいろな意見はありますけれども、結局のところどっちが勝っても合衆国憲法の理念は外さないですよね。お互いに合衆国憲法はちゃんと守って広げよう、という暗黙の了解があるから、あれだけガンガンやりあってもアメリカという国は自由主義を守って行こうという一貫性の中で国が運営されている。合衆国憲法という理念を広げるためにアメリカの政府はあるというふうに私は整理しています。

もう一回整理すると、組織にとって、共同体にとって一番大事なのは理念です。その理念を広げるために事業を作ります。その事業の担い手を作るために組織を作ります。理念が一番大事で、それを実現するために、事業と組織を作ります。繰り返しになりますが、理念が一番大事です。

それだけ大事な理念ですが、ではここで、白馬村の理念って何なんだろうかということを思うわけです。いろいろと調べたんですが、やっぱり村民憲章なんじゃないかなと。1979年、今から37年前に作られたこの村民憲章をホームページで拝見したときに、素晴らしい村民憲章じゃないか、と思いました。現代的だし、素晴らしい村民憲章だと心の底から思います。特に真ん中辺にある「白馬岳、姫川に象徴される豊かな自然風土は私たち白馬村民の命です」と。こういうことを命だと言い切るような憲章を持っている自治体はそんなにないんじゃないのかな、と思うんですよね。先ほどのビデオにも「白馬村が好き」という方がいっぱいいらっしゃいましたが、ここに書かれている村民憲章というのは、みなさんたぶん同意されるんじゃないのかなと思います。この37年間でたくさんの方が白馬村で働いたり、村長さんも替わったりされていると思いますが、たぶん一貫して言えるのは、村民憲章から外れることはやめようじゃないかと。この村民憲章を信じる住民を増やしていこうとされているんじゃないかと思います。

村民憲章には続けて5つほどの箇条書きの項目があります。 自然に学ぼう。そして先祖の遺産を大事にし、地域に根差したローカルな文化を大事にしよう。温かい心を持って、人間関係を保っていこう。美しい山河を守っていこう。白馬の土と人を愛して、そういったものを愛する人を訪問者として迎え入れよう。こういったことが書かれています。

白馬村がこれからどうすればいいかと、迷った時にはこの村民憲章に立ち返って、村民憲章が増えることをやる、村民憲章に反することは減らしていくということを100年間繰り返していくというのが基本的な線ではないかと思います。白馬村の成功の定義は何なのか、それは村民憲章という皆さん自身が決められた理念・志に村全体が近づいているのか、それとも遠ざかっているのかということが、成功を計る物差しではないかと思います。

スポーツの場合は勝利の条件って決まっていますよね、人より早く走ればいいとか、人より点を取ればいいとか。企業の場合に難しいのは、勝利の条件が決まってないことです。勝利の条件を自分で作らないといけないんです。勝利の定義を決めるってすごく大事なんですが、白馬という地域の勝利は何かというと、先ほどの村民憲章に近づいているかどうか、これが勝利・成功に近づいているのか、繁栄から遠ざかっているのかということを計る鍵なのではないかと思います。

例えばですが、白馬村が100年後、人が溢れて、白馬都になりました、人口が80万人くらいです。これ勝ちでしょうか。こういうのが勝利と言えるのでしょうか。それから経済的発展のために、いろんな工場をどんどん誘致してくるとしますよね。豊かな水資源もありますから。例えばこういう大工場が来て、村内GDPが10倍になりました。それは勝ちと言えるでしょうか。繁栄と言えるでしょうか。例えば白馬村に素晴らしい国際的なカジノができて、世界中から楽しむ人がやってきました。そういうのも観光としては成功なんでしょうか。繁栄と言えるでしょうか。何かやる度に、こういうことを常に問いかけることが大事ではないかと思います。

これは白馬駅前の写真ですね、後ろの方に「白馬村の命です」と言われている山が写っています。37年前はどういう景色だったのか、当時私は住んでいなかったのでわからないですが、37年前と比べて今の方がより美しい山が見える、より美しい山になっている、というようになっていれば、この37年間の駅前は良かったと言えると思うし、遠ざかっているのであれば次の100年間であるべき姿に戻そうよという議論を、村民憲章という物差しを使って一つずつ話し合いができるのではないかと思います。

ここからは私の個人的な意見ですが、「こんな白馬村はいやだ」というものです。これは全部、村民憲章の裏返しですね。自然が嫌いな人が増えた。先祖を大切にするのではなく新しいことだけやりましょう。新しいこともやった方がいいですよ、楽しいことが多いですから。だからと言って先祖を大切にしないことはやめましょうよ、ということですね。それから、便利になったけど山も川も汚くなった。こういうのもなんか嫌だなぁ、と一村民として思います。そして、村民憲章からすると反対側の方じゃないのかなぁと思います。

逆に、「こんな白馬村が好きだ」と思うことは、100年前よりも白馬岳は豊かに、たくさんの動植物や木が今よりももっとたくさんあるようになってほしいし、姫川も今よりもっとキレイになってほしい。地元の方に聞くと「40年くらい前はもっと魚がいたんだけどなぁ」なんて話をしています。最近テンカラ釣りを始めたので、もう一回そういう川になればいいなぁと思います。そして美しい山河がよりキレイに見えるような場所ができて、そういうのが好きな人が日本だけじゃなくて世界中からどんどん訪れるような白馬になってほしい。これが私の願望であると同時に、村民憲章で謳われている精神の方向なんじゃないのかな、と思います。

白馬村は100年先に何を残すのかというと、村民憲章を実現することを残すというのが根本的にはあるのではないかと思います。

ただ、理念というのは念仏のように唱えていてもダメです。理念は理念として大事なんですが、それを実現する具体的な戦略や方針が必要です。それが百馬力がやってくれているNPOのような取組みだったりします。百馬力以外のNPOも頑張らないといけないし、行政ももちろん頑張りますし、共同体みんなが仲間ですから、観光事業の人、教育事業の人、自然保護活動をやっている人、山やスキーに携わった仕事をしている人などいろいろな方がワンチームになって、ワン白馬で理念を実現するためにあの手この手でやろうじゃないかということが大事だと思います。

正直、これだけたくさんのユニークな方がいらっしゃるので、まとまるのは大変だと思います。それぞれが好きなことをやってもいいと思います。ヤフーでは基本的に好きなことをやってもいいと言っています。ただし、会社の理念から外れることはやらないでくれと。村の理念に沿うことを好きにやっている限りは、みんながてんでばらばらにやっていても、遠くから見ると同じベクトルに動いて見えるようになると思います。いろんな人がいろんなことをやればいい、と。ただし、村民憲章をすごく大事にした村づくり、事業開発をやっていけばいいのではないのかなと思います。

私は会社を経営していますので、事業をするうえでの鉄則みたいなものを2つだけ紹介します。1つは選択と集中です。いろいろなことをやりたくなります。目移りするんですよね。ただし、やりたいことと、やれる力というのがあり、常にやりたいことの方がやれる力よりも多いです。何をすべきか集中することはすごく大切です。自分たちの強みに一番集中する、これが非常に大事です。もう1つは、どんどんやりたいことが増えていきますので、やらないことを決めておくということが同じくらい大事です。やらないことを決めると、やりたいことに集中できるようになります。選択と集中、やる・やらないを決める原則というのは、大事なので何度もしつこく言いますが、村民憲章に掲げている理念、これが大事だと思っています。理念にプラスになるようなことは、どんどんやればいい。理念にマイナスになることは、新たにはやらないし100年かけてちょっとずつ減らしていこうよ、というのが仕分けをするリトマス試験紙になるのではないかと思います。

例えば「言葉」と書いてあるのは、100年後の子ども、彼ら・彼女たちは日本語に加えて英語という言葉を覚え、プログラミング言語というもう一つの言葉を覚えた方がいいと思います。そういった言語も覚えてほしい一方で、せっかく白馬村に住んでいるんだから、昔からの長野県の方言といったものもちゃんと喋ってほしいなぁと思います。教育も、当然プログラミングもできてほしいけど、せっかく白馬村に住んでいるんだから、いろんな高山植物の名前とか、昆虫の名前とか、食べられる山菜、食べられるキノコ・食べられないキノコの区別がつくような人になってほしいなぁと、そういう教育ができるのは世界の中でも限られた場所だし、そういった人材というのは村民憲章に則った自然を愛する人材なのではないかなと思います。

ここには可能性のある事業を書いていますが、村民憲章に書かれている、姫川水系と白馬山系の自然を大事にして、より豊かにしていくことに資することを一生懸命やっていけば、皆が自由にやっても、遠くから見れば「まとまっているじゃん、白馬」というふうになります。

私の生まれ故郷は、100年前はこんな感じでした。「こんな感じ」というのは、私の家のそばには富士山は無かったので「こんな感じ」と書いています。富士山は無いですが、白砂青松の非常にきれいな海岸線があって、きれいな砂浜があって、そして魚や鳥がいっぱいいて、松林が何十キロも伸びているような、そんな素晴らしい海岸線の街で私は生まれたそうです。

でも、実際にはこのスライドほど酷くはないですが、私が生まれた頃には、さっきあったような海岸線は全部埋まっていました。なぜかというと、そういうものよりも「工場を誘致しよう」と。私は瀬戸内海のコンビナート上の街に生まれましたので、海岸線のほとんどが埋まっていました。そしてたくさんの工場を誘致したんですよね。でもその後何が起きたかというと、誘致した工場は海外に行ってしまいました。残ったのは埋立地だけ。今そういう状態に多くの日本の地域はなっているんじゃないかなと思っています。

これは実際には100年前の白馬ではないですが、100年前も、200年前もこういう景色が白馬にはあったんじゃないのかなと思います。

そしてこれが現在の白馬の姿です。もちろん変わっているところはありますが、概ね変わってないですよね。たぶん日本も含め世界の至る所で100年前と今を比べた時に、ものすごく景色が変わっているところがほとんどだと思います。やっぱり変わることはいいことで、変わった方がいいこともあります。ただし、変わらないものがあるということはとても素晴らしいことです。なぜなら世界のほとんどが変わり続けるからこそ、「我々はこれだけは変えないでいようよ」ということは、白馬を世界から見てもものすごく際立って差別化される素晴らしいポイントになるからです。

100年前はこうでした。そして今はこうです。100年後はこれがもっともっときれいに残っている。そんな100年後であってほしいです。そうすると世界の人々がビックリするような美しい村ができるんじゃないかなと思います。今、世界の一部の人が「白馬の村ってすごいよ」と、来るようになりましたよね。100年後は世界中からもっと来ると思います。交通のテクノロジーというのは、ものすごい勢いで技術革新が起きていますよね。100年前というのは、日本からサンフランシスコまで移動しようと思うと船で1か月かかっていました。まだ飛行機が無かったですからね。今は10時間くらいで行けます。100年間で、1か月かかっていたものが10時間になりました。たぶん100年後は、これまでの歴史的な技術の革新から考えると、西海岸と日本は1時間半とか2時間で移動できると思います。そうなると世界のあらゆるところからさっと白馬に来れるようになるわけです。だからこそ、世界の中で白馬にしかない美しい何かを残すということは、経済的にもものすごくインパクトを残すのではないかと思います。

これは白馬にとってすごく大きなチャンスになると同時に、一方でものすごい競争となることも意味します。100年経つとヒマラヤのような世界で一番すごい山岳エリアもそれなりの観光エリアになってしまうと思います。100年後に世界で一番人口が多い国はインドだと言われていますが、インドの人がヒマラヤに行くのか、白馬に来るのか、シャモニーに行くのか、こういう選択肢で旅行や観光を選ぶわけです。そういうところに比べても白馬は勝っていると、白馬は世界一だと言えるようなものを創り上げていかないと、日本の中で一番ではなくて、世界の中で一番美しい何かが残っていると、そういうものを創らないといけないと思います。

そんな世界と戦うなんて今からできるのかという心配をされる方もいると思いますが、私は割と楽観的に考えていて、できると思っています。小さな変化とやりぬく力を組み合わせると巨大な変化を絶対に起こすことができます。例えば、毎年3%でいいから、より白馬がきれいになることをやろう。そして白馬の美しい自然とか景観から外れるようなものを3%減らそう。たった3%です。たった3%の変化を100年愚直に繰り返せば、20倍になります。白馬は今でも美しい村ですが、毎年3%の変化を続けるだけで、今よりも20倍美しい村に、100年あれば十分になることができます。

最後に少しまとめをしたいと思います。

村民憲章を実現する村になろう。白馬岳・姫川に象徴される豊かな自然風土は私たち白馬村民のいのちです。我々の命を大事にする村になろう、命をより輝かせるための事業をやっていこう。一つひとつの事業は小さな変化でいいので、100年間愚直に続けていこう。そうすれば今よりも20倍美しいこの村を創っていけるのではないかと思います。

私は会社の中で「来たときよりも美しく」という言葉をよく使います。自分の子どもにもよく言ったりするんですが、好きなことをやってもいいわけですけど、少なくとも来たときよりも美しくしていこう、と。生まれたときよりも、いつか死ぬときに、少しでも世の中を、1mmでもいいから美しくして次にバトンを渡したいな、と思います。私はヤフーに入って20年になりますが、いつか必ず辞める日が来ます。辞める日に「俺が入った時よりも1mmくらいはいい会社になったなぁ」と言えるように貢献して辞めたいと思います。大事なことは一人ひとりの人が、自分がこの村に参加したときよりも美しくしていくこと、その100年の積み重ねが村をすごく変えていくのではないかと思います。

私自身もそうですし、皆さんもそうです。大事なことは、皆さんが「生まれたときよりも白馬村は美しくなりました」と言って次の世代に受け継げるようにすること。我々のご先祖様、先人が受け継いでくれてこういう素晴らしい村が残っているわけですよね。このバトンというものをここで途切れさせるのは、ものすごく良くないことだと思います。大事なことは、私たち自身が生まれたときよりも美しい村を残していく。白馬村の憲章に謳われている美しい村を残す。1mmでもいいから美しくする。それを次に残すというこがとても大事なのではないかと思います。

100年というのはすごく長いです。ただ一方で、長いように見えて、意外とすぐ来ます。今平均寿命は毎年どんどん長くなっています。私が生まれたときの日本人の平均寿命は73歳と習いました。今は84歳です。いろいろな医学データによると、このペースでいくと今年生まれた子どもは平均寿命が100歳を超えるそうです。今この中にもお子さんがいらっしゃる方がいると思いますが、100年後というのは皆さんのお子さんが生きている可能性もあります。長いようで短いです。だからこそ私は子どもが生まれたときよりも、我々自身が死ぬときに必ず美しくしてちゃんとバトンを渡す。その義務を果てしていくことを私も一村民としてやっていきたいと思います。

以上で私の基調講演を終わります。ありがとうございました。

-2016年12月4日-